新薬の作り方

研究所の新しい研究テーマって、どうやってはじまるの?

企画部門の業務はたくさんありますが、最も重要なものは、研究所の生命線と言える新規研究テーマの企画です。

この記事では,研究所の新しい研究テーマがどのように始まるか、その過程での企画部門の役割について、私の経験をもとにわかりやすく説明します。

新しい研究テーマがはじまるまで

研究所にはたくさんの研究テーマがありますが、成功するものは多くはなく、研究テーマの中止は日常茶飯事です。

そのため、研究所の活動を維持するためには、常に新しい研究テーマを企画提案し、開始しなくてはいけません。

社内研究テーマは、研究員のアイデア(作業仮説)を研究計画という形にまとめ、上層部の承認を得ることで開始することができます。

研究計画の策定

研究員は、論文や学会、社内での基礎研究などから、新薬のアイデアを着想します。単なるアイデアを研究計画に磨くために、作業仮説を策定していきます。

研究う計画に必要な作業仮説の例

  1. 薬剤の標的となる生体分子は何か。その分子はどのように病気に関与するのか。
  2. 標的となる分子をどのように制御するのか(例;機能を高めるのか、低めるのか)
  3. その結果、どのような病気のどのような症状を改善できるのか。
  4. 標的となる分子を制御するには、どのような性質の化合物を合成するのか。どのような化合物から合成をスタートするのか。
  5. 合成した化合物の効果を、どのように評価するのか。
  6. 化合物が病気に効果を示すとの作業仮説を、研究所の実験でどのように検証するのか。

仮説策定に必要な情報をあつめ、作業工程の設定と必要な人員・費用の見積もり、各部署の作業期間を踏まえたスケジュール設定を行います。

これらの項目の策定に加え、設定した作業期限での研究テーマ継続可否判断の基準策定も重要です。

企画部門の役割

このような研究計画策定作業は、一人ではできません。

最初のアイデアを出すのは1人の研究員です。しかし、そのアイデアをもとに、どのような方針で化合物を合成し、有効性を確かめるのかを計画できるのは、それぞれの分野の専門性を持つ研究員です。

つまり、研究計画の策定には複数の部署が関与することになります。そこで、部署間の要望を調整する作業が必要になります。

この調整作業は、自分の専門のみを見がちな研究員ではなく、第三者的視点で対応することが可能な企画部門が担当することとなります。

また、計画策定に必要な専門家からの情報収集や市場状況の調査も企画部門の仕事です。

研究テーマの提案と承認

これらの作業を研究員とのチームワークで何とか乗り切り、研究計画が策定されると、上層部への承認を得るための会議へと進みます。

この会議には研究員と企画部門が参加しますが、毎回緊張の連続です。

会議でのプレゼンテーション、質疑応答は研究員が行います。しかし、会議前に上層部への感触打診や会議における論点把握をするのは、企画部門の仕事です。

会議中は、議事録作成のために会議の流れを頭の中で整理しながら、ハラハラドキドキしています。

無事、研究テーマが承認されると、そこからは研究員主導で研究活動がスタートします。企画部門は、表舞台には立たず、裏方として調整作業や全体スケジュールの管理、第三者的目線での課題抽出が業務となります。

一方、採択されなかった場合には、そこで終了することが多いですが、再起を目指し立案を継続する場合もあります。どこまで粘るかは、そのアイデアにどれだけの面白さがあるかどうかで決まるような気がします。

まとめ

研究所の新しい研究テーマは、1人の研究員のアイデアをたくさんの部署の専門知識を用いて研究計画という形に磨き上げ、上層部の承認を得ることで開始することができます。

企画部門は、調整作業と情報収集・整理作業を介して、研究テーマ開始に向けて縁の下からサポートします。

 

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